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しごと・就職【小野市】進学先からUターンし、地元北播磨の企業に就職

就職難を乗り越え、めぐり合った地元企業

株式会社カコテクノス【兵庫県小野市】

小林佑輔さん、松末大嘉(たいが)さん

田舎道に突如現れる電車の正体は?

兵庫県の南北を結ぶ国道175号線。小野市浄谷町北の交差点を東に折れて道なりに進むと、電車の車両が目に飛び込んできます。

廃車になった1100系1117号の車両を
神戸電鉄から譲り受けて展示している

これは株式会社カコテクノスが会社の敷地内に展示する神戸電鉄の車両で、希望者には車内の見学会を行っています。

社会インフラを支える「止める技術」に強みを持つ

1935年創業のカコテクノスは、鉄道車両用制御機器や変電所設備制御機器のメーカーとして社会インフラの一翼を担ってきました。
とくに鉄道分野に強みを持ち、主力製品のブレーキ制御装置は新幹線をはじめ日本国内を走る電車のおよそ半数に搭載されています。

2016年には「ひょうごオンリーワン企業」に、2017年には主力製品のひとつである回転速度センサが「ひょうごNo.1ものづくり大賞」にそれぞれ選定されるなど、兵庫県を代表するものづくり企業としての地位を確かなものにしてきました。

就職難を乗り越え、めぐり合った地元企業

同期入社のおふたり(右から松末さん、小林さん)

そんな同社に2010年、同期入社したのが小林佑輔さんと松末大嘉さんです。現在、小林さんは検査課に、松末さんはブレーキ構造設計課に所属しています。

小野市出身の小林さんは地元の工業高校を卒業後、福井工業大学に進学。「自動車整備に興味があったことから機械工学科自動車システムコースを専攻し、車の設計から開発、整備まで幅広く学びました」と振り返ります。

加西市出身の松末さんは地元の普通科高校を卒業後、金沢工業大学に進学しました。「高校は理系でプログラミングを学びたいと思い、大学では工学部情報工学科を専攻してシステムエンジニアを目指していました」と話します。

そんなおふたりは大学卒業後、進学先の地域や都市部ではなく、地元北播磨にUターン就職しました。

まず小林さんは進学先の福井県での就職は考えず、当初は都市部も含めた近畿圏の自動車関連企業に絞って就職活動をしたそうです。

「ですが当時はリーマン・ショックの煽りを受けた超就職難の時期。思うように就活が進まないなか、地元小野市で電車のブレーキ制御システムを手がける会社があるのを知り、工場見学に訪れたのが入社のきっかけですね」と小林さん。

工場見学では「社会の安全を支えている」と説明を受けたのが印象に残りました。「自動車関連という当初の希望とは異なりましたが、地元のいい会社にめぐり合ったと思っています」と会社への思いを話します。

実家から通える範囲で就職活動

一方の松末さんは「実家の加西市から通える範囲で就活しました」と振り返ります。

「なぜなら大学に進む際、卒業後は地元に帰る約束を両親としていたからです。しかしシステムエンジニアを募集する会社は北播磨にはなく、志望職種を技術職に広げることで興味を持ったのが当社だったのです」と松末さん。

小林さんと松末さんが採用面接を受けた職種は構造設計でした。「設計の仕事ならものづくりに携わることができますし、大学で学んだプログラミングの知識を直接活かせるわけではないものの、希望していたパソコンを使った仕事もできます。そうしたことを総合的に考えて、当社を志望してご縁をいただきました」

若くしてリーダーに抜擢される中小企業にやりがい

パソコンを使い、CADで図面を起こしている

カコテクノスは営業から設計、製造、検査、組み立て、試験までの一貫生産によるものづくりに強みを持ちます。その一連の工程のうち、設計を担当しているのが松末さんです。
「私はその設計の中でもブレーキシステムを専門にしています。お客様の仕様書に沿ってCADで図面を起こし、求められる制御装置を開発する仕事です」

松末さんがそう説明するように、普段の仕事はパソコン作業が中心ですが、顧客とのやり取りも頻繁に発生します。

「その点、松末はお客様との打ち合わせもしっかり対応できているので頼もしいですね。さらに仕事の教え方が上手なので部下の成長が早いのです」と上司で営業部・技術部次長の小紫章さんは評価します。

温かいまなざしでふたりを見守る小紫さん「仕事のやりがいは、新しい製品を一から設計することです。さらに少数精鋭の中小企業は若くしてリーダーを任せてもらいやすいので、やる気のある人にとって中小企業は働きがいのある環境だと思いますよ」

小紫さんに設計の相談を行うこともしばしば

一方で大変なのは設計でミスしたとき。たとえば図面上で寸法が合わなければ次工程に影響してしまいます。

「でも松末は社外だけでなく、社内の現場とのコミュニケーションも積極的に取ってくれているので安心です。今後も仕事に対する思いや信念を大切に、これまでの当社にはない新しい働き方のスタイルを模索していってほしいですね」と小紫さんは期待します。

Uターン入社組はコミュニケーション上手

こうして松末さんが設計したのち、協力工場で製造された製品の「受け入れ検査」を担当するのが小林さんの役割です。

図面で規格を確認し、慎重に作業する小林さん

「協力工場でつくられた製品に対して、ノギスやマイクロメーターといった測定器を使って検査を行っています。100%完璧な寸法は存在しないなか、お客様や製品ごとに異なる規格をもとに誤差の許容範囲を理解したうえ、検査するのが難しい点ですね」

仕事の内容をそう説明する小林さんは、「一方で不具合を発見したときは『よし』と思いますよ」とやりがいを話します。

そんな小林さんの働きぶりを小紫さんは次のように評価します。

1000分の1単位の正確さで検査を行う

「彼は設計部門の出身なので、図面が読める強みが今の仕事に活きていますね。さらに松末もそうなのですが、高校卒業後に進学で地元を離れ、Uターンしてきた人は付き合いが上手だと感じます。小林はその点が顕著で社交性があるのです」

協力工場にとっては、自信を持って送り出した製品が小林さんにチェックされることになります。

お互いを信頼し合う上司と部下の間柄が垣間見える

「だから協力会社さんに対しては、前向きに取り組んでもらいながらも指摘すべきことはするというバランス感覚が求められます。その点、小林はコミュニケーションの取り方が上手です。さらに社内とのやり取りもうまくやってくれていますね」

そう話す小紫さんは、小林さんへの期待を次のように語ります。

「自分の力で検査を行う力は十分身についてきました。今後は技術をさらに高めながらも、同時に人を育てる力を養ってほしいですね。松末と共に中核人材に成長してくれることで、会社がさらに活性化していきますから。ふたりには期待しています」

旧友との交流に親孝行……地元にUターン就職する利点

小林さんは結婚し、ふたりの娘さんに恵まれています。いまは実家に同居中ですが、間もなく実家のとなりに新居が完成するとのこと。

「正直言うと、都会で働きたかった気持ちもあるのです。でも地元に帰れば小中高の旧友と交流できますし、親孝行もできますから。住めば都じゃないですが、田舎や地元もいいものですよ」

松末さんは社内で出会った人と結婚後、加東市に新居を設けました。もうすぐお子さんが産まれる予定です。

「都市部の大企業に就職すれば条件も恵まれているかもしれません。でも北播磨のような地域なら比較的朝に余裕を持って車で通勤できますし、満員電車にすし詰めになる辛さもありません。実家から通っていたときは家族のサポートも受けられました」

そんなおふたりは就職活動時、当初の志望職種から少し枠を広げて現在の会社にめぐり合いました。「だから自分の希望にこだわりすぎず、少し柔軟に就職先を考えると良い出合いがあるかもしれませんよ」と就活に励む学生にアドバイスを送ります。

最後に今後の抱負を語ってもらいました。

「自分が設計した製品がかたちになるのが喜びです。今後は新しい製品の設計にもチャレンジしていきたいですね」

そう展望を語る松末さんに続き、小林さんは次のように意欲をみせます。

「今後もさらに検査技術を高めるとともに、いろんな規格を覚えて検査に活かし、次工程のスタッフから信頼される人材に成長していきたいですね」

設計部のフロアにて。「近寄ると照れますね」と皆さん

同期入社で地元企業に入り、それぞれの持ち場で活躍する小林さんと松末さん。そのふたりを見守る小紫さんも同じく、かつてUターンで入社されたとのこと。Uターン組が活躍するカコテクノスの今後のさらなる発展を期待したいと思います。

文・写真/高橋武男


【会社情報】
株式会社カコテクノス 小野工場
〒675-1318
小野市北丘町355-16
TEL:0794-62-6411
http://www.kako.co.jp/

事業内容/【電鉄事業分野】鉄道車両用 各種制御装置(ブレーキ制御装置、保安制御装置他)、【電力事業部分野】変電所用 各種制御装置(開閉機器制御装置、変圧器周辺機器他)、
【産業機器事業分野】社会インフラ向け各種制御装置

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