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ひょうご暮らし方セミナー&相談会in大阪 スペシャルレポート

昨年12月8日、大阪・梅田にある阪急グランドビルで〝移住相談〟「ひょうご暮らし方セミナー&相談会 in大阪」が開催されました。会場をいっぱいにした46名の参加者は、人気テレビ番組に出演した、リフォーム・リノベーションの「匠」のトークや各地の先輩移住者の体験談に耳を傾け、相談ブースで思い思いの質問・疑問を投げかけながら談笑。プレゼントのひょうご特産品を手にして、熱気に包まれた会場を後にしました。その詳細や参加者の感想などをレポートします。移住や住み替えに関心がある方、必見です!!

イベントインデックス
※各テーマをクリックすると、レポートを読むことができます。

<セミナー>

1 オープニングトーク

2 スペシャルゲスト・住まいの「匠」トーク

3 先輩移住者×地元市トーク

4 相談会

5 参加者の声

オープニングトーク

開会~ひょうごの魅力をご紹介

 まず簡単に、兵庫県のご紹介をさせていただきます。兵庫は、北は日本海、南は瀬戸内海に面し、太平洋を望むとても広い県です。大都市から緑豊かな農山村までさまざまな地域があるので“日本の縮図”とも呼ばれていて、特色のある歴史や文化、産業を持った5つの国からできています。「摂津」「播磨」「但馬」「丹波」「淡路」です。

写真:オープニング
写真:会場の様子

 とても広い県域ですが、例えば大阪からですと、三ノ宮はJRの新快速で約20分、一番西にある赤穂へも新快速電車で約1時間40分。日本海に面した豊岡ですと、特急か車で約2時間半です。淡路の洲本市へは、車で約1時間40分で行くことができます。

 普段は都会で働きながら、週末は自然を楽しんだり、逆に、自然豊かな地域に住んで田舎暮らしや子育てをしながら、週末に都市部でのショッピング、娯楽を楽しむ・・・そんな素敵な暮らしも、兵庫では実現できてしまいます。

 今日は、この兵庫の5つの国から6組の先輩移住者のゲストの皆さんにおいでいただいています。ぜひ、ご自分のライフスタイルに合った地域を見つけていただければと思います。(兵庫県広報専門員 清水奈緒美)

写真:会場の様子

 

スペシャルゲスト・住まいの「匠」トーク

才本謙二さん
~リフォーム・リノベーションによる暮らしの再生~「豊かな自然に包まれた古い家で暮らすこと」

写真:才本さん

<プロフィール>
 (有)才本建築事務所代表取締役。丹波篠山市育ち。関西大学工学部建築学科卒。同市を中心に、県内外で新築住宅・店舗・公共施設のほか、古民家などのリフォーム・リノベーションを数多く手がける。国土交通大臣賞など受賞歴多数。テレビ番組「大改造!!劇的ビフォーアフター」にも“匠”として出演。

「リフォームに欠かせない、動機・整理・効率・計画」

 今日は、リフォーム・リノベーションは楽しいというお話をしたいと思います。家を作っては壊しという時代から、最近は「家を大事に使っていこう」という時代になりました。みなさん、リフォームを簡単に考えられるのですが、しっかり計画性を持ってやらないとなかなか難しいですし、ムダなお金を使うことにもなります。

 みなさんは、何年くらいたったら“古民家”とされるかわかりますか? 文化庁の「登録有形文化財」という制度では、原則50年を過ぎれば“古民家”扱いになり、普段、われわれが携わるのは戦前くらいの建物、築70年くらいの物件です。

 リフォームには、建物そのものが古くなった、ライフスタイルが変わったなどのきっかけがあって、「ちょっと変えようか」となる。次に、具体的にどのようにリフォームしようかと整理する段階があり、中古住宅、古い家ほど、耐震・省エネ・バリアフリーなどに対する補助金制度を活用すると効率的です。

写真:才本さん

「自分たちが思い描くイメージに合わせて」

 テレビ番組の「大改造!!劇的ビフォーアフター」に出たときは、予算内でリフォームをするために“捨てる”“壊す”はできない。そこで、“再生する”をテーマにして、流しやお風呂などほとんどの住宅設備はもらってきました。“物の大切さ”や“人の心”などはちゃんと視聴者に伝わったようです。

 いくつかリフォームの事例を紹介します。ひとつめは尼崎市の駅近くの物件です。長屋の一番端で、昼間でも暗いリビングや昔ながらの台所の家をリフォームして、気分を一新したいという依頼内容でした。3階建ての階段を中心に、家の中に風の流れと光を取り入れるようにしました。

写真:事例1Before-After

 ふたつめは加西市で、家の玄関のすぐ前が県道で大変危険な状態で、玄関らしく改造したいなどというご希望でした。そこで玄関には建物の正面ではなく横から入るようにして道路からの“引き”をとりました。このように、古い家でも少し手を加えることで快適になりますし、今まで通りに住み続けることもできます。

写真:事例2Before-After

「いい空間を作って、暮らしのリセットを」

 最後に私の事務所。築90年以上の建物を買い取り、住まいと設計事務所にしています。よく“暮らしの再生”と言っているのですが、昔の暮らしをしたいと思い、五右衛門風呂を作りました。もともとあった“おくどさん”(かまど)も使えるようにして、さらに囲炉裏を作りました。せっかく、丹波篠山に住むなら、薪の生活をしたいと思ったのです。とはいえ、最近は電化製品に頼っていますが(笑)。でも、災害に強い家だと思います。井戸があるので、水道が止まっても水をくみ上げられる、薪があるから電気・ガスが止まってもごはんが炊ける…と、ライフラインが止まっても何日かは暮らせる家になっています。

写真:才本さん宅Before-After

 近所の方からはお化け屋敷と呼ばれていた家を買ってリフォームして、暮らしも再生して生活しています。リフォームやリノベーションで、それぞれが目指す快適な住空間は簡単に作れます。いい空間を作って、暮らしのリセットというのはできます。大阪と兵庫の田舎での、“二地域住居”というのも可能かなと思います。たった一度の人生ですから、「今の暮らしでいいですか?」と問いかけたいと思います。

写真:才本さん

 

先輩移住者×地元市トーク

「複業で大都市の里山を守る」
神戸市 鶴巻耕介さん

写真:鶴巻さん

30代・観光農園など経営・東京都からIターン

<プロフィール> 地域に根差した生活を求めて、里山が残る神戸市北区淡河町に移住。「つるまき農園」の屋号で米・サツマイモ農園を経営するほか、農村定住コーディネーター、茅葺き職人のテッタイ(手伝い)、古民家保存会事務局、大学生向けインターンシップのコーディネート等、少量多品種型の活動を行っている。百の知恵と技を持つ、現代版百姓を目指す。2児の父。

~神戸市企画調整局産学連携ラボ 白川瑞穂さんの神戸市についての紹介の後、鶴巻さんが登壇~

 

「子どもができたのをきっかけに移住」

 僕は高校卒業までは東京で暮らし、大学進学を機に西宮市に来ました。社会人として宮城県で働いたのち、26歳のときに学生時代にボランティア活動をしていたNPO法人に職員として戻りました。NPOではいろいろな子どもたちの支援に関わり、そんなときに僕にも子どもができて、「自分の子どものことがおざなりになっていないか」という疑問を持ち、まず自分自身の生活の仕方を変えないといろいろなことが解決できないのではないかと思い、5年ほど前に妻の実家がある淡河に移住しました。それほど自然が好きというわけではなく、地域に残る濃い人間関係がどういうものかを確認したくて移り住んだというところです。

 住まいは茅葺きの家を借りています。北区には、茅葺きの家が800棟ほど残っていて、大都市にこれだけの茅葺きの家がある地域は珍しいと思います。地域は稲作も盛んで、僕もお米を作っています。車があれば便利で、三宮まで30分、大阪までも60分です。

写真:鶴巻さん

「専門職でなくても生活できるスタイルで」

 移住で僕が目指したのは、自分の手でできることを増やしたい、地域の中でいろいろなことをやりたい、そして仕事を一つに絞らずにリスクを分散させたい、なるべく家族の近くにいて仕事をしたい、自分の地域は自分たちで面白くしたいということです。「鶴巻農園」という屋号は、畑だけでなく地域も耕したいという気持ちから“農園”としました。

 農園では、サツマイモやお米を作っています。そして、淡河町にある築70年以上の古民家「淡河宿本陣跡」を地域のメンバーで改装して、コミュニティースペースとして活用しています。5年前から神戸市と空き家を探して移住希望者にコーディネートする仕事もしています。週2回ほど、茅葺きの屋根の職人さんのお手伝いも。とにかく、いろんなことを仕事としてやっています。

 パン屋さんとか鞄職人とか、専門職の人だけでなく、僕みたいなスタイルでも生活できるようになっていないと、移住という行動が広がらないと思ったので、今、仕事をもらいつつ自分でも作るということをやっています。

写真:鶴巻さん

 もともと“会社”がなかった時代は、春から秋は農業をして、冬は茅葺き職人の手伝いをするなど、いろいろな仕事を複層的にしながら生計を立てていたのではと思っています。“副業”がはやりですが、いろいろな仕事(複業)をしながら、自分の生活スキルも高めていければいいなと。現代だと、エクセルやワードを扱えるのも技のひとつと思い、“100の知恵と技”を持つ、現代版の百姓になれたらいいなと思い、いろいろな活動をしています。

 都市にも近くいろんなものを作って販売する、逆に人を呼ぶというのもやりやすい地域です。

*     *     *

「野良仕事&大阪で企業勤め」
三田市 岡田真二さん・まどかさん夫妻

写真:岡田さん

40代・会社員・大阪市からIターン

<プロフィール> 夫婦そろって田園に囲まれた三田市波豆川が気に入り移住。真二さんは平日は大阪に通勤し、まどかさんは家事を担いながら、夫婦で日々野良仕事に励む。住まいは昔の面影を残した築100年以上の茅葺き古民家で、風呂やかまどに薪を使うなど、手間をかけた心地よい暮らしを楽しんでいる。3児の親。

~兵庫県阪神北県民局県民交流室・地域振興課 寺田隆裕さんの阪神北エリアについての紹介の後、岡田さんが登壇~

 

「楽しいから大変じゃない、手間だから楽しい」

 (※プロジェクターで表示された「楽」の文字を指して)

 この字、なんとお読みになりますか? “らく”“たのしい”と読みますね。では、“ラクなことは楽しい”ですか?

 私たちは、五右衛門風呂や竈(かまど)を使って生活、つまり薪を使った生活をしています。でも私たちは大変とは思っていません。楽しいからです。ごはんを炊くときは、“火吹竹(ひふきだけ)”を使います。子どもたちと一緒に吹いたりしていると、本当に楽しいです。

 “ラクなことは楽しい”ですか?とききましたが、逆に、“楽しいことはラク”ですか? 楽しいことをしているとあっという間に時間が過ぎませんか。例えば、子どもが楽しく遊ぶためには、“時間・空間・仲間”(“三間(さんま)”と呼びます)が必要です。今の世の中では、この“三間”を揃えるのは難しい。都会には遊ぶ空間がない。田舎には子どもが少なく、仲間が少ない。そして子どもは忙しく、時間がない。

 “間”が付く言葉が他にもあります。“手間”です。私たちは薪を使ってごはんを炊き、お風呂を沸かします。手間をかけた生活は、楽しいのです。でも、今の世の中は、まず手間を省こうとする、それがラクで便利だという流れです。その結果、同時に楽しさがなくなっている気がします。手間と楽しさは相性がいい。

写真:岡田さん

 私たちが引っ越したときには「よくこんな不便な場所に来たね」と言われました。ですが、私たちの暮らしは、薪が手に入ることが大事なわけです。山に囲まれて薪が手に入る今の環境というのは、非常に便利です。つまり、便利さは人によって、暮らしによって違うはずなのです。

「自分の直感と違和感を信じて」

 「田舎暮らしで困ったことはないですか?」ときかれますが、正直なところ、ないです。楽しんでいるからです。もうひとつ大事なことを見つけました、“責任”です。田舎は水がきれい、空気がきれい、景色がきれい…でもそれって、地元の方が守っているものなのです。草刈りをしたり、ときにはチェーンソーで木を切ったり…そういうことが脈々と続けられてきていて、住民になれば私たちも責任を担っているわけです。ある程度責任がないとハリがない。責任がある人生はとても楽しいと思います。

 私が強調したいのは、直感と違和感。みなさんは、直感で「今日のセミナー、楽しそうだ」と思ったわけですよね。そして「今の暮らし、いいのだけれどちょっと物足らなさを感じている」という違和感。違和感はひょっとしたら責任感からきているかもしれません。「今のままの社会でいいのか」という大きな責任感が漫然とあって、それが違和感となって、さらに直感としてこの場にいる。

 移住を考えているならまずは実際にその空間に立ってほしいです。直感を感じたら、そこは、“GO!”です。違和感を覚えたら、やめた方がいいですが、自分の直感と違和感を信じて移住先を探すと、きっとうまくいくのではないかと思います。

写真:岡田さん

*     *     *

「夫婦で脱サラ、カフェ付き農園を開業」
三木市 藤井大輔さん

写真:藤井さん

40代・農園&カフェ経営・大阪市からIターン

<プロフィール> 夫婦それぞれ大阪のアパレル会社、雑貨会社勤務の後、脱サラして移住し、農業研修を受けるかたわら移動型カフェを出店。独立後は水耕栽培による葉菜類等の生産販売を開始。2019年1月には、朝どれ野菜が楽しめるカフェ「birica coffee & freshveges」を開店して、新たなチャレンジを続けている。1児の父。

~三木市総合政策部縁結び課 成瀬拓生さんの三木市についての紹介の後、藤井さんが登壇~

 

「めまぐるしい生活環境の変化を体験」

 僕は、三木市でちっちゃな農家を営んでいます。住んでいるのは山々に囲まれた農村地帯、いわゆる田舎です。出身は神戸市兵庫区で、移住する前は大阪市浪速区に住んでいました。そこから三木への移住によって、めまぐるしい生活環境の変化を体験しました。

 三木に行くにあたって会社をやめ無職になり、農家をやるために農業研修を受けました。自転車でどこでも行けてなんでもあるところから、車がないとジュースも買えないようなところへ移って暮らしています。大阪にいたときは24時間、買い物も飲食もできて、早朝も深夜も昼間と変わらない活動をしておりましたが、今は活動時間は朝5時から夜8時くらい。夜8時を過ぎるとあたりは真っ暗になります。

 大阪ではマンションというコミュニティーの中で暮らしていましたが、今は、村・集落という単位で自治会を運営しながら暮らしています。休みの日は映画やギャラリーに行ったり、ショッピングをしていましたが、今はたまの休みの日には草刈りをしたり(笑)です。

写真:藤井さん

 良かったことは、“毎日が新鮮”。これは今もです。そして“空が広い”。“子育てがしやすい”です。三木市では国に先駆けて保育料の無償化を実施していますし、待機児童もなく、スムーズに保育園に預けることができました。それから、“事業をスタートできた”。三木市には中小企業サポートセンターというものがあり、基本的には無料でサポートしてくれます。何よりも、“新しいつながりができた”こと。新たな人とのつながりも広がりましたし、もともとの仲間とも、形を変えてつながっていく。

 大きな苦労もありましたが、何とか乗り越え、農業をやったり地域の活動に参加したり、子どもはすくすく育ち、仲間といんろんな取り組みを始めたり、事業を立ち上げ、お店を開くこともできました。お店には、村の人も子供たちも集まってくれて、少しずつ生活が固まってきているという状況です。

写真:藤井さん

「今までと違った生き方、新しいチャレンジを」

 移住とは“暮らす場所を変える”ことですが、神戸から大阪に移ったときには、誰も「移住してきた」とは言わなかった。そのときは“引っ越し”と言いました。でも大阪から三木に移ったときは、「大阪から移住してきた人」「三木に移住してきた人」と、気づけば自分たちは“移住者”と呼ばれるようになっていました。この違いは何なのかと考えてみたら、“今までと違った生き方をするため”“何か新たなチャレンジをするため”に住居を移動することを、“移住”と呼んでいるのではないかと。

 「こういうことをしようかな、どうしようかな」と思っていたら、した方がいいと思います。もしそれが兵庫県への移住で、自分たちの近くに来られることになれば、また新たな流れのきっかけになるのかなとワクワクしてお待ちしております。

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「夫婦でダイバー&民宿開業」
豊岡市 田中陽介さん・美紀さん

写真:田中さん

30代・民宿&ダイビングショップ経営・大阪府熊取町からIターン

<プロフィール> 陽介さんは20代で海に魅せられ、但馬・香美町のダイビングショップ兼民宿に勤務し、同じ職場に勤めていた美紀さんと結婚。豊岡市竹野町でダイビングショップ「T-style」、「民宿ねこざき」を開業。水中写真がダイバーに人気で、四季を通じた海の魅力発掘にも力を入れている。

~豊岡市環境経済部環境経済課定住促進係 濵田由佳さんの豊岡市についての紹介の後、田中さんが登壇~

 

「『なんとかなる』と行き当たりばったりで移住」

 僕が、なんで移住したかというと─。26歳まで勤めていた大阪市内の会社がなくなることになりしばらく自分探しをしていました。その間、趣味でやっていたダイビングを自由にできるようになって、「ダイビング、好きかも!」という気持ちがどんどん大きくなったのでいろいろ調べていたら、兵庫県の香美町でダイビングの仕事を見つけたという流れです。普段は和歌山に潜りに行っていましたが、和歌山や沖縄はダイビングが盛んすぎて、それに比べると兵庫北部の海は未開だったのと、知り合いも誰もいないところに行った方がおもしろいのではないかというのもありました。いざとなったら実家のある大阪にも帰れるという距離感も決め手となりました。

写真:田中さん

 「移住に不安はなかったのか?」という点については、インターネットなどで事前に調べることを一切せず、行き当たりばったりで、「なんとかなる」と安易に考えて移りました。移って良かったのは、海が格別にキレイなところです。海の中は透き通っています。“ちょうどいい田舎”なのも、いいところです。豊岡市は、スーパーもコンビニも病院もあり、日常生活でそれほど不便を感じません。車があれば、ホームセンターや大型家具店でなんでも揃えることができますし、飲食店も、ちょっとお高めの割烹からファストフード店まであります。

 但馬牛や松葉ガニなど有名な食べ物もいろいろありますよ。みなさんが思うほど、我々は食べていませんが、漁業が盛んなので、都会では流通しない魚、例えば干物のイメージがあるハタハタをお刺身で食べたりします。

 逆に、ちょっとしんどいなぁというところは、やっぱり、雪が降るので冬は厳しいです。竹野は海沿いなので、風が強く、体感温度としてはさらに低い。大雪が降ると、仕事の前にまず雪かきという重労働があります。どうやって乗り切っているかというと、春からのことを考えて気持ちをつないでいます(笑)。あとは、冬にしかできないことを見つけます。冬でも潜れば楽しいんじゃないかと思って海に潜ってみると、夏とは全然違う生き物が見えるということもありました。

「田舎の企業に就職するのも、立派な移住」

 地域とのコミュニケーションを大切にしようと思っています。こちらから誠意を持って近づくと、ちゃんとこたえてくれました。海や山の仕事をしているので、それをみんなに理解してもらいながら、地域の行事などにもできるだけ参加しました。

 豊岡は、「田舎に住んでみたいけれど、本当に不便すぎるところはちょっと困る」という人にはいいんじゃないかな。車さえあれば、不便はないです。経済的な面で、「仕事はあるの?」という不安があるかと思いますが、ここはポイントなのですが、豊岡は兵庫県なので最低賃金は高いです。

写真:田中さん

 “移住=起業”のイメージがあると思いますが、田舎の企業に就職するのも立派な移住だと思っています。補助金などのいろいろな制度があるので、ぜひ調べてから移住していただきたいなと。それから、行ってみれば何とかなるのですが、文化は違うので、今とまったく同じ暮らしができるというのはちょっと無理か、とも。例えば豊岡市の場合、車は“絶対”です。運転免許がない方は、免許を取ってから来てください。

 最後に、「ちゃんと生活できているの?」についてですが、まぁまぁできていると思っています。アルバイトも募集中ですので、もしよかったら、後程聞きに来てください。

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「リタイア後の田舎暮らしを満喫」
丹波市 花田裕子さん

写真:花田さん

60代・リタイア生活・堺市からIターン

<プロフィール> 夫の退職を機に田舎暮らしを考えていたタイミングでたまたま長男が丹波市に勤務・移住したのをきっかけに、夫婦で移住。近所に住む長男が始めた農家民宿を手伝って、畑で作った野菜を使った料理に腕を振るう。季節感を味わいながら、ログハウスの工房で趣味の手織りを楽しみ、暮らしを満喫している。

~丹波市住まいづくり課 地域おこし協力隊 慎淑恵さんの丹波市についての紹介の後、たんば移住テラス「Turn Wave」(一般社団法人 Be 代表理事)中川ミミさんと花田さんが登壇~

※花田さんと中川さんの対談形式で進行

 

「趣味を楽しむ」

中川さん 花田さんは、ほかの先輩移住者の方よりも、ちょっとオトナの移住者。大阪から丹波に移住された花田さんの、暮らしと趣味の時間、地域での活動についてうかがいます。まず暮らしについてですが、農業をしたかったのですよね?

花田さん 大阪にいるころから夫が家庭菜園をしていたのですが、移住して初めて、約700坪の広い畑を耕すようになりました。近所の人が耕運機などを貸してくださり、みなさんにいろいろ教わって夫と二人で季節の野菜などを育てています。たくさんお野菜がとれるので、息子が経営している農家民宿で野菜を使った料理を作り消化しています。

中川さん お野菜を育てているほか、趣味の時間も大切にされているとか。

花田さん 移住したからには、なにか趣味を作ろうと考えていました。もともと縫い物が好きで、丹波布を織る学校を卒業された先生のところに1年間通って勉強しました。家の庭には6畳ほどのログハウスを建てて、中古の機織り機を買い、自分で買った糸や毛糸を織ったり、裂き織りをして楽しんでいます。今着ている服も織ったもの。織った布からストールとバッグをセットで作ってご近所の方に差し上げたり、むりやりお友だちに送ったりしています。楽しく、趣味の時間を過ごせています。

写真:花田さん

「地域の人と、新しい事業にチャレンジ」

中川さん 田舎暮らしをすると、地域とのつながりができすよね。どのように地域に溶け込んでいきましたか?

花田さん 引っ越してすぐ、一人暮らしのお年寄りと公民館でお食事をするというボランティア活動に誘われて参加したところ、すぐに地域に溶け込めました。今は、みんなでランチをしたり、半日くらいわいわいおしゃべりをしたりと、楽しんでいます。

中川さん 移住を考えられている方に教えてあげてください。田舎暮らしは暇ですか?

花田さん 全然、暇じゃないです。野菜は次々とできるし、それを傷めずにどうやって保存しようかと考えて、乾燥させたり、切り干し大根や干し芋を作ったり。畑から帰ってきたら、加工するのに忙しいですし、お味噌を作ったり、お茶を作ったり。ブルーベリーやユズの実がなればジャムにするし、一年中、結構忙しいですよ。

中川さん 丹波の自然の中で、四季折々の暮らしをしている花田さん。地域の活性化のためにと新しい活動をスタートされたのですよね。

花田さん 有志と社団法人を立ち上げました。リタイア世代ではありますが、移住してから、地域の人と一緒に、新しい事業にチャレンジしています。

写真:花田さん

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「ライターとして島の暮らしを発信」
洲本市 藤本沙紀さん

写真:藤本さん

20代・フリーライター・東京都からIターン

<プロフィール> 移住体験イベントへの参加をきっかけに、務めていた広告会社を退職し、東京から単身、淡路島へ移住。ポピュラーなものよりも“マイノリティ”に秘められた価値や思いを発信することを目的に、「紡ぎ屋」の屋号でライター業・制作活動を行っている。制作物には、「淡路島移住促進パンフレット」の実績もある。

~洲本市企画情報部魅力創生課 小松秀さんの洲本市についての紹介の後、藤本さんが登壇~

 

「淡路島との出会い」

 東京から淡路島へ単身移住し、2020年3月で丸3年になります。仕事はライター業をしています。東京にいたころも、編集業に携わっていましたが、務めていた広告会社では主にアパレル関係や化粧品関係の制作物を作っていました。しかし競合の多い業界で、次から次へと新しいものが出てくる世界。発信をするうち、「もっと世の中には、目を向けるべきものがあるのではないか」と違和感を抱くようになりました。

 そう自問自答しているときに、淡路島と出会います。たまたまフェイスブックのタイムラインで、淡路島で地域おこし協力隊をされている方が企画されたイベントの投稿を目にしました。それを見た私は、「旅費の高いゴールデンウイークに、アルバイトをして稼ぎながら観光ができるなんて、最高じゃん!」と、軽い気持ちで参加することにしました。初めて訪れた淡路島で感じた印象は、「そんなに島っぽくないし、意外と都会」。しかしそのときは、“もう二度と来ることはないんだろうな”と思っていました。

 ですがその後、東京に戻ってから持病が悪化しました。仕事に行くのもきつくなって、どうしようかなと思っていたときに、仲良くなった地域おこし協力隊の方と話をしたら「淡路島に来ちゃいなよ」と。「体が大事だから、まずは自然がたくさんある環境に移って、できることから始めてみたら」と言われて、そういうタイミングが来たのだなと感じました。

写真:藤本さん

「バランスの良い生き方ができている」

 移住してから4か月くらいで、フリーでライター業を始めました。ライターの仕事は家にこもることが多いので、取材で外に出ることは頭の切り替えや気分転換になるので貴重な時間です。

 移住をして良かったことは、環境の変化か、持病が治りました。あとは農家さんが多いので農作物をいただくことも増え、食費が減りました。自分と向き合う時間もたくさんできたので、とてもバランスの良い生き方ができているように感じます。

 苦労したことは、物件の敷金・礼金の高さです。初期費用がかかるので、移住のハードルを上げているように感じました。なのでいろいろなところで相談して、利用できそうな制度があれば、どんどん活用することをおすすめします。あと、驚いたことで言うと、ごみは指定の袋を購入して捨てるので、お金を払わないとごみを捨てられない環境に衝撃を受けました。淡路島はお店が閉まるのも早いし、夜の時間を長くも感じますが、いまでは人間らしい生活が送れていると感じています。

 移住に大切なことは、「ご縁と直感と、タイミング。そして、勢い」。意外となんとかなるので、あれこれ考えず、まずは飛び込んでみることが大事かなと思います。

写真:藤本さん

 

相談会

 セミナー終了後、住まいの「匠」、先輩移住者、神戸市など7市・6地域、住まい、田舎暮らしなどの相談ブースが置かれ、終了時間いっぱいまで、参加者と、先輩移住者や移住担当者、専門家との熱心なやりとりが交わされました。

 また、セミナー参加者には丹波黒豆や須磨海苔、神戸牛カレーなどがプレゼントされたほか、その場で「ひょうごe-県民」に登録した方を対象に、豪華特産品セットが当たる抽選会も行われました。

写真:相談会の様子
写真:相談会の様子2

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参加者の声

 セミナー・相談会に参加した人の声を紹介します。「具体的にイメージできた」「背中を押してもらえた」「リアルな声が聞けた」などの感想が目立ちました。

  • 丹波に移住した方の話に興味を持ちました。丹波での暮らしがより具体的にイメージできてよかったです(大阪市在住・50代男性)
  • 今の生活から遠すぎない、兵庫での新しい暮らしを検討中です。不便すぎない地域があるとわかったので、次はお試しの体験宿泊をしてみようと思いました(豊中市・60代女性)
  • 子どもの独立を機に、畑を耕して自給自足ができるような田舎での暮らしを検討中。考えるなら早めにと思い、セミナーに参加しました。相談会では、農業の話を聞くこともできて、一歩進んだ感じがしています(西宮市・50代夫&40代妻)
  • すぐにではないが、移住を視野に入れて今後のことを考えているところ。セミナーでは、それぞれの個性が感じられる話を聞くことができて面白かったです(神戸市・30代女性)
  • 平日は会社勤め、週末は田舎暮らしの“二重生活”から始めてみたいと思い相談会に参加。ブースではいろいろな話を聞くことができました(大阪市・50代男性)
  • 1~2年のうちに但馬へのUターンを考えているので、相談会で仕事探しや住宅支援のサイトについて教えてもらえたのはよかった。これから、いろいろ調べていきたいと思います(大阪市・30代夫&40代妻)
  • 新しい暮らしを始めてみたいと感じているところで、具体的なことはまだ何も決まっていません。情報を集めているところなので、相談会に参加してみました。これからいろいろ考えていきたいです(堺市・30代男性&20代女性)
  • 働き方や暮らし方を変えたいので、移住を考えているところ。セミナーでは、先輩移住者の声に共感をし、背中を押してもらえました(高槻市・40代女性)
  • 妻の実家がある兵庫県で、新しい暮らしを始めたいと考えているところ。先輩移住者の話は、飛躍しすぎず身近に感じられる内容で、参考になりました。前向きに移住を検討できると思いました(大阪市・40代夫婦)
  • 暮らし方をリセットしたくて、情報を収集中です。今は、淡路島の暮らしに興味があり、セミナーでは先輩移住者のリアルな声を聞くことができて良かったです(神戸市・30代男性)
  • ゆくゆくは移住をと考えています。セミナーは話も面白かったし、役に立ちました。相談会にも参加して、具体的に考えてみようと思いました(尼崎市・40代夫婦)

 

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スペシャルゲスト・住まいの「匠」トーク

才本謙二さんが手がけた、その他の施工事例

丹波篠山・坂本の家

 空き家になっていた“実家”をリフォーム。茅葺きの家で、長い間空き家になっていたので、相当傷んでいました。一旦、床を全部はがし断熱材を入れたり、耐震補強を施すなどしました。

写真:才本さん宅Before-After_事例3

のびのびの家

 三世帯の大家族の家です。使っていない部屋をうまく使いたいとのことで、少し大がかりなリフォームになりました。あまり使われていなかった“離れ”があったので、そこを使う提案をしました。

写真:才本さん宅Before-After_事例4

雀庵

 三世帯が暮らす家で、かなり老朽化していて解体する話も出ましたが、天然素材を使い、南向きのスペースを有効に使いました。高砂の左官職人が作った“雀”が飾られています。

写真:才本さん宅Before-After_事例5

加古川・マンションリフォーム

 マンションのリフォームでは、壁や窓を触ることはできません。水回りや家具で、暮らしの豊かさを出すことになります。使い勝手を検討して、収納付きのイスを造るなどしました。

写真:才本さん宅Before-After_事例6

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