山梨からデンマーク、そして豊岡へ――。 豊岡に移住して鞄づくりを学び、メーカーに就職。

鞄のまち・豊岡で腕を磨きたい

株式会社服部【兵庫県豊岡市】

斎藤小春さん

 

デンマークに留学し、ものづくりの基本を学ぶ

鞄(かばん)の一大産地である豊岡市に本社を置く株式会社服部。1830年(天保元年)に京都市で旅行用品関連の雑貨問屋として創業したのち、明治時代に柳行李(やなぎごうり)鞄を手がけ始め、終戦を迎えた1945年に豊岡市に本社を移転した老舗の鞄メーカーです。

そんな同社に2018年3月に就職したのが斎藤小春さん。山梨県出身の斎藤さんは高校卒業後にデンマークに留学し、帰国後に鞄職人を養成する豊岡の「トヨオカ・カバン・アルチザン・スクール」に入校しました。

「子どもの頃からものをつくるのが大好きで、アクセサリーやポーチなどを自作して友だちによくプレゼントしていたんです。高校卒業後は日本の大学への進学も考えましたが、志望する学部や学科が見つかりませんでした。無理に大学に行って4年間を費やすのなら、自分の好きな道に少しでも早く進みたいと思ったんです」

「ものづくりに興味を持ったのは、ガラス工芸家の父、 金属工芸家の母の影響も大きいですね」と斎藤さん

そこで飛び込んだのがデンマークのものづくり学校でした。デンマークには「フォルケホイスコーレ」という独特の教育機関があります。日本でいう専門学校に近い形態で、芸術系や体育系など特定分野に特化した教育が受けられます。斎藤さんはものづくり系の学校を選択し、英語の勉強も兼ねながら職人のイロハを学びました。

「さらに勉強だけでなく、就職するまでに興味のあることをたくさん経験したくて。そこで留学と前後し、野沢温泉スキー場のレストランや長野県下諏訪のゲストハウスのスタッフとして、あるいは新潟の旅館の仲居としてそれぞれ短期で働きました。貴重な経験が積めて楽しかったですね」

 

 

 

テレビ番組で興味を持ち、豊岡の鞄職人養成スクールへ

そんな好奇心と行動力にあふれる斎藤さんが豊岡とつながるきっかけは、偶然見たテレビ番組でした。

「デンマークへの留学が決まったころ、テレビ東京の『ガイアの夜明け』でアルチザン・スクールが特集されていたんです。鞄の生産地で職人技を学べると知り、ぜひ入りたいと思いました」

番組を見て興味を持った斎藤さんは、さっそく豊岡のアルチザン・スクールを訪ねて面接を受け、デンマークから帰国後に入校したい旨を伝えます。そして2016年4月、トヨオカ・カバン・アルチザン・スクール第3期生として学ぶことになったのです。

ゆったりとした話しぶりの背景に芯の強さを感じる

「スクールではスケッチや、図面、型紙、縫製など、鞄づくりの全工程を勉強しました。さらにメイン講師の竹下嘉壽先生からは鞄を補強する芯材の使い方や鞄を長持ちさせる秘訣など、貴重な工夫をたくさん教わることができたんです。その学びが今に役立っています」

鞄のまち・豊岡で腕を磨きたい

卒業後は地元の山梨や東京で働くか、豊岡の鞄メーカーに就職するか、迷っていたという斎藤さん。

「最終的に豊岡に残ると決めた理由はふたつです。ひとつは鞄のまちの魅力に惹かれたから、そしてもうひとつは指導者の方々からもっと学びたいと思ったからです」と話します。

豊岡は千年の伝統を持つ国内随一の鞄の産地で、現在市内に100社以上の鞄関連企業が集積しています。「鞄づくりのあらゆる工程がひとつのまちで完結し、指導を仰げる環境も整っている。この豊岡で鞄づくりの腕を磨きたいと考えました」

 

伝統に新風をもたらす鞄クリエイターとして期待

「経験を積み、会社を背負う人材に育ってほしい」と 斎藤さんに期待する服部社長

こうして卒業後は豊岡の鞄メーカーに就職したのち、2018年3月から服部にお世話になっています。同社の服部清隆社長は斎藤さんについて話します。

「彼女は技術的なセンスもあるし、何よりものづくりに対する強い思いを持っています。自分の娘を受け入れたつもりで鞄づくりのすべてを教え込み、立派な鞄クリエイターに育てたいですね」

服部社長が〝クリエイター〟という言葉を使ったのには理由があります。

「それは彼女のような新しい風を積極的に受け入れて、会社を変革していきたいからです。当社は古い会社ですが、守るために商売をしてきたわけではありません。各時代、その時々の状況に併せて変わり続けてきた結果、今があるのです。彼女にはクリエイティブな発想で仕事に取り組んでもらい、新しいモノづくり、コトづくりに挑戦してほしいですね」

1925年(大正14年)の北但馬震災で倒壊後、 1927年(昭和2年)に再建された本社建物

初めて縫製を手がけた新作に込めた思い

新作裏地の縫製作業に取り組む

斎藤さんは服部に入社後、出荷業務を担当して取扱商品や取引先の理解を深めたのち、裁断工程、縫製工程と少しずつ担当範囲を広げてきました。

「各工程の技術力を高めたいのはもちろん、最終的に鞄づくりのすべてを学びたいんです。だからいろんな工程を経験させてもらえる環境はありがたいですね」

 

 

国産の8号帆布にトロピカルな柄の裏地を使用した新作。 カラーはブルー、グリーン、レッドの3色展開

取材に伺ったときは、斎藤さんが初めて縫製を手がけたサンプルができ上がったタイミングでした。帆布生地を使ったシンプルなデザインながら、裏地にトロピカルな柄をアクセントとして起用したおしゃれなトートバッグです。

生地側に傾くよう縫われているチャック。
鞄に物を入れる際に引っかかりにくくなっている

「鞄が自立するよう固めの芯材を入れたり、内側ポケットのチャックの縫い方に気を配ったり、スクールでの学びを活かしながら手がけました。お出かけのお供にぴったりの可愛い鞄に仕上がったと思います」

 

 

 

 

移住の不安を和らげるため、地域を知るためのワンクッションを

豊岡に移住して2年目を迎える斎藤さん。豊岡は海や山、スキー場が近く、「アウトドアが好きな人には一年中楽しめますよ」と魅力を話します。

「さらに車で20分ほどで城崎温泉にも行けるんです。市内割引を利用すれば半額で温泉に入れるんですよ」

一方で「山梨の実家まで距離があり、ふらっと帰れないのが寂しい」とぽつり。それでも「地域の人たちの温かさに支えられています」と笑顔を見せます。

移住は見知らぬコミュニティに飛び込んでいくことになるため、「その地域に慣れるためのワンクッションを設けるのが大切」と斎藤さん。

「私の場合はスクールで1年勉強する中で地域に溶け込んでいくことができました。クリーン活動などの地域の活動や催しに参加してみて、地域の人たちとコミュニケーションを取ってみるのもいいかもしれません」とアドバイスを送ります。

その人のためのオリジナル鞄をつくりたい

今後は鞄づくりの全体を勉強したうえ、「将来的には〝その人のための鞄〟をつくれるようになりたい」と抱負を話します。

自ら手がけた新作を手に

「鞄は物を包んで運ぶものですが、身近なパートナーでもあると思うんです。お客様の鞄に対する思いを聞き、その人のためのオリジナル鞄をつくれるクリエイターになるのが将来の目標です」

写真撮影にご協力いただいた服部社長と

豊岡の鞄づくりの担い手として、伝統に新しい風を吹き込む若手として、持ち前の行動力を活かした今後の活躍が期待されます。

 

 

 

 

文・写真/高橋武男


【会社情報】
株式会社服部
〒668-0022
兵庫県豊岡市小田井町13番25号
TEL:0796-22-6161
http://hattori-bag.co.jp/

事業内容/鞄の企画製造・販売

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