日本精機宝石工業株式会社（美方郡新温泉町）〔レコード針事業〕
業務部購買課　國谷諭司さん

目次

１.Ｕターン就職のきっかけ　ー子供と接する時間を大切にしたいー
２.｢日本精機宝石工業株式会社｣入社　ー会社の経営理念に共感ー
３.地元の魅力　ー蛇口から温泉ー
４.これからの目標　ー新温泉町ライフの満喫ー
５.会社のご紹介

１　Ｕターン就職のきっかけ　ー子供と接する時間を大切にしたいー

【聞き手】担当業務内容を教えてください

【國谷さん（以下「國谷」】当社の主力商品であるレコード針に使用されるダイヤモンドチップやパウダー、鉄の板や樹脂チップから紙やダンボール、ナイロン袋まで資材の発注から管理、また発注した資材の納期を調整するのが主な業務です。

【聞き手】Uターン就職されたきっかけはなんですか？

【國谷】大きなきっかけは毎年、大学の友人が主催するビーチバレーのお手伝いするため、里帰りを兼ねて夏休みに帰省していたことでした。前職の仕事があまりにも忙しかったため、子供と接する時間を取ることができず、このままでいいのかと常に悩んでいましたが、都会の生活と比べてゆっくりと時間が流れていくことを感じ、こんな生活もいいなあと考えるようになり、子供が大きくなってしまう前にと決断しました。東日本大震災を経験したことも、地元に戻ろうと思ったきっかけの１つになりました。

【聞き手】かなりお忙しかったようですが、前職はどのようなお仕事をなさっていたのですか？

【國谷】建築関係の会社で主にマンションや工場などの現場管理をしていました。納期に追われる中、天候の状況で遅れたりすると、どんどんタイトなスケジュールになってしまいます。そのような現場をいくつもかけもちしていると朝早くから夜遅くまで仕事一辺倒となり、子供の寝顔しか見られない日々が続いていました。

【聞き手】地元に戻られてからはどう変わりましたか？

【國谷】改めて自然に触れることの大切さを実感しました。それに時間軸が違う。東京で生活をしていた頃は昼間の青空や夜の星空を見上げる心の余裕がありませんでした。地元に戻ってからは同じ一日でも時間の流れが緩やかに感じるようになりました。季節を楽しむ余裕ができ、時間的にも精神的にもゆったりと過ごせています。

【聞き手】奥様から反対されませんでしたか？

【國谷】偶然にも学生時代に観光で訪れたという経緯があり、そのことが私と妻の距離を縮めるきっかけにもなりました。妻には地元に戻りたいと漠然と思い始めた頃から相談していましたが、地元の良さを知っていてくれたこともあり、快く賛成してくれました。

２.｢日本精機宝石工業株式会社｣入社　ー会社の経営理念に共感ー

【聞き手】「日本精機宝石工業株式会社」に入社したきっかけは？

【國谷】ハローワークに相談に行くなど再就職を模索していた時、地元の企業の経営者の方々からお話をお伺いする機会に恵まれ、その中で当社の会長の経営理念に共感したことがきっかけです。ちょうど今私が担当している購買課の前任者が定年を迎えられて後任を探されていたタイミングであったことにも運命を感じました。

【聞き手】未経験のお仕事に不安はありませんでしたか？

【國谷】前職では営業から設計、積算、見積もりまで仕事としての一通りの流れを経験していたので、建築の分野でなくても働いていけるという自信はありましたが、現在担当している購買という業務は、資材の調達という面では前職でも経験しておりましたので、経験を活かせる仕事に就けたと思っています。

【聞き手】購買課のお仕事での一番のやりがいは何ですか？

【國谷】レコード針の先端部分のダイヤモンドなど精密加工、特殊加工を行う協力会社は個人で経営されている方が多く、その方に何かあるとたちまち仕事がストップしてしまいます。何か問題があったときの代替策や、仕事を受けてくれる会社を前もって見つけておくなど常にリスクを回避できるように動いていることが、現場がスムーズに機能することにつながると考えています。急なトラブルを問題なく解決できたときは現場の役に立てたと自分なりに満足しています。

【聞き手】お仕事をする上で心がけていることは何かありますか？

【國谷】協力会社の方とは常に対等にお付き合いするように心がけています。こちらが発注する側ではありますが、協力会社の方がいないと我が社の製品は完成しません。先方の事情も加味してお互い協力していく必要があると考えています。納期が遅れると言われたときも責めるのではなく、譲歩できる最善策を話し合うようにしています。建築の仕事をしていた時も自分よりキャリアの長い職人の方をまとめるのは苦労したのでその経験は今に活かされていると思っています。

３.地元の魅力　ー蛇口から温泉ー

【聞き手】お仕事では満足されているようですが、暮らしていく上での地元の魅力は何だと思いますか？

【國谷】一番は蛇口をひねったら温泉が出ることです。新温泉町浜坂地域は浜坂温泉からの豊富な湯量により、旅館・民宿ばかりでなく各家庭にも配湯されており、配湯戸数は日本一を誇っています。蛇口に硫黄の結晶が付いているのを温泉地でよく見かけますが、浜坂地域の温泉は塩分が高いので家の蛇口に塩の結晶が付いています（笑）。同じく湯村温泉でも各家庭以外に警察派出所寮・役場温泉支所・健康福祉施設などの行政施設や幼・保施設、小学校、中学校などの学校施設、銀行や病院、各旅館の社員寮、ペット温泉施設などにも配湯されています。

【聞き手】食べ物やレジャーもかなり魅力的ですよね？

【國谷】但馬牛を始め、浜坂港で水揚げされる春はほたるいか、夏はいか、冬は松葉がにと食材はかなり恵まれています。スーパーで地元ならではの食材を手頃な価格で購入することもできます。レジャーも夏は海水浴、冬はスキーと楽しみはたくさんあり、温泉同様、戻ってきて改めて魅力的な場所だと思いました。もっとこの町の魅力を多くの方に発信していけたらと考えています。

【聞き手】交通の便は若干不便に思えてしまうのですがどうですか？

【國谷】大阪や神戸まで出ようと思うと少し時間がかかりますが、鳥取までは車で４０分もあれば行けるので買い物には困りません。近所の方が知らないうちに玄関に大根を置いてくれているなど田舎ならではのふれあい、助け合いがあるのも暮らしやすさの1つといえます。特に子供は自然の中でのびのび育っており、食べ物も美味しいのか好き嫌いなく健康に育っています。

４.これからの目標　ー新温泉町ライフの満喫ー

【聞き手】これからの目標をお聞かせください

【國谷】仕事面では当社の技術力・発想力の高さをもっと知っていただくため、現場と連携しながら商品開発などの起案も行っていきたいと考えています。プライベートではこれから大きくなっていく子供と釣りやハイキングなどどんどん外での遊びを一緒にやりたいと思っています。私も自然の中で育ってきたので、都会の子供では頻繁にできない遊びを教えていきたいです。家族で新温泉町ライフを満喫しようと思っています（笑）。

【聞き手】最後に新温泉町に興味を持った方にアピールお願いいたします

【國谷】ネット環境も整っているので情報交換は問題ありません。デザイナーの方など、こちらで起業していただけたらと思います。その他アウトドアを生活の一部として楽しみたい方はもちろん、仕事と家族の時間を分けて時間に余裕を持って生活したい方、お子様の健康を気にされている方にはおすすめです。

５.会社のご紹介

常務取締役　新古　雅紀様

【聞き手】日本精機宝石工業様の歴史的背景と現在までの歩みを教えてください

【新古様　以下新古】浜坂の町は江戸時代の終わりから縫い針の生産地でした。当時の記録では明治初期には国内トップの生産量を誇っていたと書かれています。その後、蓄音機用鉄針の生産を経て当社では現在約30メーカー、約2200種のレコード針を製造、アメリカ、ヨーロッパを中心に約110ヵ国に輸出しています。1本単位から受注しており、95％が海外からのお客様でWEBからの発注は一万人を超えています。さらにダイヤモンド加工の技術の応用から開発された微細な寸法の計測用「コンタクトゲージ」、難加工材を研削するための「ダイヤモンドバー」、またオーディオ関連製品として「レンズクリーナー」の開発、製造などの分野へ参入しております。

【聞き手】今新たに取り組まれている製品開発は何ですか？

【新古】当社はダイヤモンドと金属を融着させていく技術を活用して新しい製品を生み出していくことを得意としております。現在はダイヤモンドが熱伝導率も高いという特性を活かした熱伝導材の開発に取り組んでおります。独自の技術を活かして常に多種多様な分野にチャレンジすることを心がけております。

【聞き手】町おこしなど何か地域活性につながる活動はされていますか？

【新古】福井県の越前塗の漆器をレコード針のノブに活用する、広島県の熊野筆を使ったレコードクリーナー、兵庫県の豊岡鞄の牛革を使用したレコードクリーナーを製作するなど各地域の特産品とコラボした商品の企画、また針の町浜坂として年４回元運送会社の蔵を改装した会場で蓄音機の鑑賞会などを行っています。

【聞き手】これから就職、転職を考えている方に一言お願いします。

【新古】このような田舎にも世界に通じる企業があることを知ってほしいです。モノづくりを通じて世界中のお客様のお役に立てていることに誇りを感じていただきたい。そういう方と一緒に働きたいと思っています。

日本精機宝石工業株式会社の企業概要

社名	日本精機宝石工業株式会社
所在地	〒669-6701　兵庫県美方郡新温泉町芦屋100番地
ＴＥＬ	0796-82-3171（代表）
ＦＡＸ	0796-82-4110
ＨＰ	http://www.jico.co.jp
設立	1959年10月
代表者	代表取締役社長 中川　和志
資本金	2000万円