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しごと・就職【加古川市】株式会社 丸十(まるじゅう)〔精密板金加工〕

強みは「人財」-一流のオールラウンドプレーヤーを育成

株式会社丸十(まるじゅう)

〒675-1204 兵庫県加古川市八幡町上西条306-235


代表取締役社長
松尾 將勝さん
製造第四課
村上 友香さん
製造第三課
夏山 祐介さん

兵庫県広報専門員 清水奈緒美(インタビュアー)

目次

1 私のしごとー高速道路や新幹線から東京スカイツリーまで
2 女性技術者として-私が検査しました。どうぞご安全に
3 私の転機-「ものづくり」の世界に飛び込む
4 丸十ベトナム工場の竣工-グローバルカンパニーへ躍進
5 強みは「人財」-一流のオールラウンドプレーヤーを育成

1 私のしごとー高速道路や新幹線から東京スカイツリーまで

【兵庫県広報専門員 清水(以下「清水」)】 村上さんと夏山さんの担当業務は?

【製造第四課 村上さん(以下「村上」)】 私の担当は「組立」です。弊社で製作した板金製品に基板やハーネスを組み付け、最後にセンサーが機能するかなど、電気的な性能検査までが担当です。全検査の合格を得て初めて出荷に至るので、特に、電気的な知識が求められます。今、主に作っているのは、ETCゲートで車両の重量や高さ、台数等を検知する車両検知器です。

【製造第三課 夏山さん(以下「夏山」)】 僕は、入社3年目で、職種はオペレーター・エンジニアです。ロボット操作や手作業でアーク溶接、溶接後の仕上げを担当しています。今作っているのは、新幹線のグランクラス座席、両替機、券売機、宅配物の荷出しをするコンベアーフレームなど多岐にわたります。

【村上】 YAGレーザー溶接技術を使った東京スカイツリーのLED照明も丸十の仕事です。ツリーの第1・第2展望台に取り付けているLED照明で夜景を照らしています。

※ イットリューム(Y)、アルミニウム(A)、ガーネット(G)で構成するYAGロッドを発振器とし、それに強い光を当ててレーザー光を励起、発振させる。CO2レーザーとともに工業用技術にとどまらず、広い分野で利用されている

 【清水】 普通の板金加工と精密板金加工の違いは、どこにありますか。

【代表取締役社長 松尾さん(以下「松尾」)】 精密板金加工製品は、鉄・ステンレス・アルミ・真ちゅう・チタンなど、金属薄板をコンピュータ制御されたマシンで正確に切断し、穴開け、ネジ切り、折曲げや溶接を経て出来あがります。0.1mm以下の誤差でも機能しない製品が多く、両替機でお金がつまる、自動販売機からコーヒーが出ない、ETCのセンサーが誤差作動するなどです。必要な精度を出すには、最新の工作機械やロボットに人間の知恵や経験を相当加える必要があります。自動車や建築の板金とは少しステージが違う。

【清水】 人間の知恵や経験が必要というのは、どういうことですか。

【松尾】 夏山君が担当する溶接の場合、製品に高温をかけますが、そうすると鉄板は、熱影響で反りますし、歪みます。その歪みを取るには、デジタル技術による標準化だけではなく、人間の経験と勘が不可欠。溶接まではできても、仕上げの出来映えやスピードでプロとアマチュア(すなわちコスト競争力)の差が確実に出ます。

【清水】 製造工程は、4部門(課)に分かれているのですね。

【松尾】 はい。第1課は、レーザーマシンによる外形、穴開け、型抜き、面取り等の二次元加工。第2課は、プレス加工。フラットな材料を折曲げ、立体に立ち上げる。第三課は、夏山君の所属で、溶接等の仕上げ。第4課は、配線、電子部品を付けるなどの組立、動作チェックをして出荷。村上さんの所属です。

2 女性技術者として-私が検査しました。どうぞご安全に

【清水】 村上さんは、丸十の女性社員初の技能検定合格者だとか。

【村上】 はい。ものづくりの会社(現場)は、男性の仕事、男性の職場ってあるじゃないですか。だけど、お客さんに信用してもらいたいし、同僚や先輩に認めてもらいたいし、自分のためにも、技術を身につけ、今後も色々な資格も取って行きたいです。スポーツをやってきたこともあり、ちょっと負けん気が強いかもしれません(笑)。

【清水】 女性ならではの技術者に向いている面は?

【村上】 男性が気付かない、細かいところまで目が届くのは、女性ならではだと思います。力仕事では劣りますが、女性ならではの気配りが出来る所が向いていると思います。

【松尾】 彼女が担当するまで、お客様の所で不適合や不具合も少なくなかったが、彼女は皆無に近いです。例えば最近は、スーパーの野菜一つにも誰が作ったか名前と顔写真がついている。同じように丸十では、村上が検査印押し、「私が検査しました。どうぞご安全に」という保証をつけている。弊社が、製品+品質保証+安心・安全を提供している証しです。彼女は、本当にかけがえのない戦力です。

【清水】 どんなときに、この仕事について良かったなぁと思いますか。

【村上】 例えば、高速道路ETCゲートを通ると、「これはあのとき自分が手がけたものだ」と分かります。逆に、製品が劣化しているのも分かるので、塗り直してほしいなぁと思うことも。人の目につくものを作っているので、大事な仕事を任されているという誇りがあります。

【清水】 誇りという言葉が出るところがいいですね。ちなみに、スポーツは何を?

【村上】 ソフトボールです。中学校・高校・実業団からクラブチームへ。30年近くやりました。左利きのリリーフピッチャーで、ファーストや外野も。

【松尾】 全国大会まで行ったよな。

【村上】 はい。姫路商業高校時代にインターハイへ。社会人になってからも、仲間でチームを作り、なんとか全国大会に行きました。

3 私の転機-「ものづくり」の世界に飛び込む

【清水】 お二人は、転職を経て丸十に入社されたとか。転職前も同じような仕事をされていたのですか。

【夏山】 僕は、京都で契約社員として機械メンテナンスをしていました。溶接とは全く関係ない仕事です。

【清水】 それがなぜ丸十に?

【夏山】 僕の地元は兵庫県の姫路なんです。契約更新のタイミングで、姫路に「ものづくり大学校」があることを知りました。ここで技術を身につけ、地元で地に足をつけて働いてみようと。

 兵庫県立ものづくり大学校:ものづくり人材を育成する教育研修(住宅系専科・金属系専科・機械系専科・ものづくり基礎科・短期コース)、ものづくりへの興味や関心を即す体験の機能を一体化した施設。http://www.monodai.ac.jp/(外部リンク)

【清水】 「ものづくり大学校」で溶接の資格をとられたのですね。大学では理系の勉強を?

【夏山】 いいえ、全然(笑)。言語学部で、英語が専門です。

【清水】 語学から機械メンテナンス。勉強されて溶接と。面白いですね。村上さんは?

【村上】 前々職も製造業ですが、検査的な職種でした。長く勤めましたが、この会社が時代の波について行けずダメになりました。退職後ヘルパー資格をとって介護職に転職。仕事の魅力はありましたが、つらいことも多く、考えてみようかなと思ったときに、丸十の就職案内を見ました。形に残る仕事、特にやりたかった組立の募集があり、そこで社長が引き受けて下さって。

【清水】 転職後に、生活の変化はありましたか。

【村上】 転職を機に姫路から明石に移り住みました。家から自転車ですぐに行ける江井ヶ島海岸、林崎松江海岸、大蔵海岸など、釣りで徘徊しています(笑)。海が好きですし、釣りは大々的に趣味なので、プライベート的にはプラスですね。

【清水】 釣り!瀬戸内海沿いの明石はいいですよね。

【村上】 お勧めは、明石海峡大橋のたもと、アジュール舞子、淡路島の付近。アオリイカが釣れますよ。あとは、サバやタチウオ。船で海に出れば、明石ダイが釣れる。まさに、自給自足です(笑)。

【松尾】 村上さん、料理は?(笑)。

【村上】 魚もさばけます!自分で釣って食べて晩酌するのが醍醐味。好きなこと、やりたいことをして、充実した人生を送りたい。全国の釣り場に行ったり、新たに始めたいスポーツもあり、そのために自分自身を高めていきたいと思っています。

【清水】 夏山さんは、京都から姫路に帰って来られて、いかがですか。

【夏山】 家族と住むようになり、気持的にも体力的にも楽になりました。仕事で遅くなっても、一人暮らしは寂しいし、ご飯も適当でいいやとなる。家族がいれば話もできるし、ご飯もある。

【清水】 お友達とよく遊びに行くスポットは?

【夏山】 今の時期なら、毎年、夢前川でバーベキュー。海に出るなら家島諸島の男鹿島ですね。みなさん家島本島に行きますが、もっと小さい島で、民宿も一軒みたいな。飾磨港から男鹿島に渡り、思い切り泳いで泊まって。メンバーは男ばかりですが(笑)。

4 丸十ベトナム工場の竣工-グローバルカンパニーへ躍進

【清水】 平成28年4月には、丸十ベトナム有限会社(ハナム州ズイティエン県・ドンヴァンⅡ工業団地)も竣工したとか。

【松尾】 はい。初年度は、現地の技術移転・生産体制を確立し、日本に輸出を開始。2年目は、部材調達の現地化でコストダウンを実現し、関税撤廃スキームをフル活用。3年目は、日本・ベトナム・第3国を含む市場の目標設定を新たにすることを目指しています。

【清水】 お二人が赴任される可能性は?夏山さんは、英語という強みもありますが。

【夏山】 いやいや、今はもう全然だめです(笑)。でも、もし機会をいただけたらぜひ。

【村上】 ベトナムなどアジアは好きですし、会社に協力ができるのであれば、一度は行ってみたいです。行くことになれば、ベトナム人の社員もいるので、言葉を教えてもらったり。

【松尾】 ゆくゆくはベトナム工場の製造責任者を任せたい赴任予定者がいますが、現在は、毎日1時間、日本語が堪能なベトナム人の女性社員から語学トレーニングを受けています。現地のワーカーさんをベトナム語で指導せねばなりませんが、ベトナム語は世界三大難しい言語。私もしょっちゅう行きますが、10個ぐらいしか単語が分かりません(笑)。

【村上】 ベトナム工場が軌道に乗り、丸十の名前が国内外に広がることは私たちの夢でもあります。

5 強みは「人財」-一流のオールラウンドプレーヤーを育成

【清水】 県内でも長い歴史のある会社ですね。

【松尾】 金物のまち三木市に近いこともあり、先代が80数年前に農機具や草刈り鎌を作っていました。戦前、戦後を乗り越えましたが、現会長が家業から企業にしたいと考え、40年位前から自販機、両替機、20年位前から高速道料金機器、10年位前から鉄道車両の板金、プレス加工に事業変換してきました。

新幹線は一段落しましたが、これからは、東京オリンピックに向けた東京メトロのリニューアル車両シート。その時代の最先端のものづくりをさせてもらってきたからこそ、今、村上さんや夏山君みたいに若い人が会社に来てくれるようになったと思っています。

【清水】 最先端のものづくりを続けてきて、この間、大きな転換はあったのでしょうか。

【松尾】 直近は、8年前のリーマンショックです。世界的な金融危機でしたが、弊社もかなりの影響を受けました。今後は、どんな波が来ても、自立できるように備えねばならないと考え、最新設備を導入しました。反対もありましたが、あの時の決断が、今では、大きな武器になり他社との差別化を図ることができました。

何より大切なのは、新技術に応えてくれる人材の育成です。リーマンショック後、品質、生産性向上などのテーマを毎回決め、月1回社員全員で2時間の座学、研修を行っています。小集団(QCサークル)による改善活動も並行に実施して、5~6か月に一回 各サークルごとに改善活動の結果発表会も開催しています。社員には様々な資格を取ってほしい。昔は、特定分野だけでも食べて行けましたが、今は仕事に山・谷がある。リーマンショックの経験からです。自分の担当業務以外も対応、応援できるオールラウンドプレーヤーが求められます。そうした「人財」が、どんな波にも耐えうる丸十の強い体制、お客さんが求める安全・安心につながると考えています。

【清水】 「人財」とは、まさにお二人のことですね。技術者としての成長で目標は?

【村上】 幸い丸十では、これだけでなく、様々な経験ができます。私は、ダラダラ行くのは嫌なので、働く限りは、更に知識も技術も上げたい。特に電気関係ですね。ただ、プライベートも忙し過ぎて・・というと社長に怒られそうですが(笑)。

【夏山】 僕は、一から十までの工程を一人ででき、様々な仕事をこなせるようになりたい。村上さんみたいに、「夏山」の名前があれば大丈夫と言われるように。

【清水】 若い人の入社も増えて、職場改善で特に取り組まれていることはありますか。

【松尾】 弊社のような中小企業、町工場は、昔からイメージとして、「汚い」「きつい」「危険」の3Kと言われています。少しでも払拭したいとの思いで、私は、丸十流の「3K」を社員に説明しています。まず一つ目は「行動」。自ら勉強したことは、きちんと肥やしになって花が咲く。

二つ目は「継続」。今後も第二のリーマンショックや天災が起こっても、また、どんな外的要因があろうとも、事業を継続して社員の雇用を守る。三つは「希望」。何年後かに家族と世界旅行をしたいとか、夢が持てて叶う会社。頑張ったらそれなりの世界、達成感がある会社にしたいのです。

丸十の企業概要

社名 株式会社丸十(まるじゅう)
所在地 〒675-1204  兵庫県加古川市八幡町上西条306-235
TEL 079-438-0011(代)
FAX 079-438-1103
HP http://kk-marujyu.co.jp/(外部サイトへリンク)
創業 1931年
設立 1960年
代表者 代表取締役社長 松尾 將勝(まつお まさかつ)
資本金 2,400万円
従業員数 90名
平均年齢 31歳
主要取引銀行 三井住友銀行三木支店・みなと銀行小野支店
事業内容 精密板金加工・各種筐体の組立・レーザー&パンチング加工・AW/SW/TIG/YAG/ARC/半自動などの各種溶接
主要取引先 古野電気株式会社・グローリープロダクツ株式会社・オークラ輸送機株式会社・株式会社椿本チエイン・株式会社協和製作所・大和製衡株式会社・川重車両コンポ株式会社・東洋事務機器工業株式会社

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